研究内容(2019年度研究テーマ)
振動と音の複合環境における振動感覚と生体反応に関する研究
自動車や鉄道車両、遊戯施設等の乗員は機械的振動と音を同時に受ける複合環境に置かれている。しかし、現在の振動環境評価の規格は振動のみが対象で音の影響は含まれていない。本研究では乗り物から発生する水平・前後方向振動を対象として、人体に振動と音を同時に与えた時の振動感覚(振動を知覚した時に感じる大きさや強さの感覚)と生体反応(心電図、脳波等)を測定する。振動感覚と振動・音を構成する物理量との関係について実験的に検討し、振動感覚に及ぼす音の影響を定量的に評価する方法の確立を目指す。
聴取状態の違いと環境音を考慮した車両接近報知音の開発
電気自動車等に搭載されている歩行者に車両の接近を知らせる音を車両接近報知音という。本研究は、歩行者が車両の接近に気づきやすく不快に感じない車両接近報知音の開発を行っているが、歩きスマホ(ながらスマホ)のようにに音の聴取状態が異なる場合、車両認知に対する危険性がより高くなる。本研究の目的は、歩きスマホ等の音を認知する時の状態(聴取状態)や周囲の音(環境音)を考慮した車両接近報知音の開発である。様々な報知音モデルを作成し、環境音に対する適切な音量や聴取状態に左右されない音条件等について実車両を用いて交通総合試験路で実験的に検討する。
変動性低周波音による生体反応とリラクゼーション効果に関する研究
低周波音とは周波数100Hz以下の音で、近年では風力発電用風車から発生す音の大きさが時間変動する変動性低周波音が騒音問題になっている。人間は低周波音によって圧迫感や不快感を感じるが、和太鼓やバスドラムの低音は腹や胸に響く振動により快適間や迫力感を感じる。また、低周波音を感じるメカニズムは解明されておらず、変動性低周波音の計測方法や評価指標もない。本研究ウーハーを設置した防音室で変動性低周波音の感覚特性や生体反応を測定し、有効な評価指標を検討する。さらにリラクゼーション効果を調べ、ストレス緩和に役立つ福祉機器への応用も検討する。
自動車の運転者と同乗者の疲労評価に関する研究
乗用車やトラックに乗って振動を受けている状況で運転操作や着座姿勢を一定時間持続すると疲労感(生体への負担が原因で発言する感覚)を生じる。本研究では、走行中の自動車に乗車している運転者と乗員の両方を対象として、疲労感を定量的に評価する指標の確立を目的としている。定量的に評価する指標とは、人間が地震で制御できない生理反応量(心拍や皮膚温度など)や走行中の振動を構成する物理量(加速度や時間など)を意味しており、これらの指標と疲労感の関係を交通総合試験などでの実車実験により検討する。
音楽による鉄道車両の乗り心地向上に関する研究
私たちは鉄道車両の乗車時に音楽を聴いて快適環境を構築することがあるが、鉄道車両の乗り心地(快適さ)は振動加速度ピーク値などの振動を構成数する物理量を用いた乗り心地係数や乗り心地レベルで評価されている。振動と音の同時感覚時における感覚のメカニズムは、感覚の優位性(振動と音のどちらを優先的に感じているか)や振動感覚の聴覚マスキングなどが考えられるが、詳細は明らかになっていない。本研究では、快いと感じる音楽のパラメータ(テンポ、1/f揺らぎ、音量など)を検討し、実車両による走行実験により音楽による乗り心地向上の効果について検討する。
【本研究は振動と音の複合環境における振動感覚と生体反応に関する研究と連携して進めます】
視触覚による表面の質感評価に関する研究
※今年度は未配属テーマです
振動・騒音測定による自動丸鋸切断機の挙動解析に関する研究
一般に旋盤等による切削加工では自励振動(びびり振動)が発生し、表面粗さの悪化や工具欠陥を引き起こします。びびり振動は悪影響を及ぼすとされていますが、発生メカニズムや加工条件との関連性は明らかになっていません。本研究では、びびり振動を予測する方法と具体的な抑制方法の開発を目指します
※今年度は未配属テーマです